まだ夏の暑さが残る9月の連休初日に朝から私と妹は一ヶ月前に通った同じ道を、今度は後部座席に小さなクレートと真新しいリードとタオルを乗せてはやる気持ちを抑えつつ向かった。
前日は「花」の為に用意した部屋の最終チェックを済ませ、明日からきっと生活が一変するであろう期待と責任を感じ鼓動が早まるのを抑えられずにいた。新しい家族と幸せになりたい、共に成長していきたい、絶対守り抜くとただただそんな思いしかなかった。

名前はすでに決めていた。もしワンコを迎えることができたら名前は「花」。お花が好きなこともあったし、お花を嫌いな人はそうそういないだろうとお花のように皆に愛され、周りの人を癒してあげられるような優しい子になって欲しい。そんな思いを込めた名前。
だからお迎えをする前からブリーダーさんには「花」ちゃんと呼んでもらい、お迎え当日までの「花」の近況報告をメールで受けとっていた。
到着して案内された部屋で一通りの説明を受け待っていると、避妊手術を終えてお腹に少し毛が生え始めてきた「花」を連れてきてくれた。
プルプルと震えるちっちゃい身体の「花」に「これからよろしくね」と声をかけた。花が生まれてから9ヶ月過ごした家族とのこの場所には二度と帰ることはないだろうと申し訳なさと同時に強い決心のような感情を抱いた。
帰りの道中、後部座席で妹にタオルで優しくくるまれながら静かにじっとしている花だった。
元気がないのか?大人しいのか?うんともすんとも言わない花に二人で心配するくらいだった。
お昼頃には帰宅し、新品のケージにクレートごと花を入れた。不安そうな瞳をこちらに向けてクレートから出てくる気配はない。
初日はこんなものだと分かってはいたものの、様子をうかがいながら静かにさせておくことしか出来ない。とにかくここは、安心安全な場所だよと分かってもらえるように。
夕ご飯は問題なく食べてくれたことだけでも一安心だった。しかし到着時から排せつをまったくしておらず気がかりだった。それでも限界がきたらするだろうと思いつつも、小さく丸まっている姿が心配でならなかった。そして静かに確実にお迎え当日、家族記念日の一日は過ぎていった。

前回のお話 → Episode 1『出会い』
