今年の夏も、母の重いミシンを出す

家庭用の卓上ミシンと裁縫道具とカットされた生地 今日このごろ

カウントダウンをしながら待ちに待った「夏休み」が今年もやってきた。暑さに弱い私は、夏にどこか遠くへ行く予定を立てることはほぼほぼない。とは言っても1ヶ月程前から「あれをしよう、これをしよう、映画をみよう、本を3冊は読もう」などワクワクしながら計画を立てる。その計画に必ず入れる予定がある。今となっては、私の夏の恒例行事となっている、ウエスとマット作り。母の重いミシンを一年に一回出す日となっている。

母が残したミシン

昔の古い手動で動かす足踏みミシン、木の台にクラッシックな黒の本体が埋め込まれている

母はよく雑巾から始まり、ハギレを使って椅子カバーや椅子足カバー、枕カバーに巾着袋、クッションなど細かいものを作っていた。時折、出来た作品を嬉しそうに、満足そうに見せてくれたのを覚えている。家には母の嫁入り道具の、足踏みミシンがあった。ギーコ、ギーコ、ギーコと母が足で軽快にペダルを踏みながら、生地が母の手の動きに合わせて同じように動いていく光景を記憶している。それがいつからか、最新の卓上ミシン(当時では)に代わり、機械と格闘しながらも、今度は電動になったスイッチでガタガタガタと、音を変えて家に響いていた。
最後まで現役で働き続けた母はよく「仕事を辞めて落ち着いたらもっと色んなものを作りたい」と言っていた。そんな機会はおとずれることもなく母は亡くなり、遺品の中にこのミシンがあった。
今の家庭用ミシンがどれだけの重さなのかはわからないが、この母のミシンはかなり重い。よく母も掛け声をかけて持ち上げていたし、私がテーブルに乗せてあげることもあった。私も年齢を重ねたからか?筋力の衰えなのか?この重さは今も変わらないはずなのに、むしろ重く感じられる。一年に一回この重さを感じる度に、ミシンを操作する母の真剣な横顔を思い出す。

一年分のお古を貯めてSDGs?

私も自然と着なくなった洋服やタオルなどはそのまま捨てることはしないようになった。
1人だと1年間でTシャツやパジャマ、タオル類など5〜6枚、買い替えの時期になるとシーツやラグなど大物が揃う時もある。

ウエス用は食器洗いの油落としや、雑巾代わりにちょっとした掃除用に。気兼ねなく使い捨てられるので重宝している。サイズも大、小と大まかにでもカットしておくと使い勝手も広がる。一年は余裕で使える量が完成する。

母の後ろ姿を見ていたからか、勿体無い精神なのか、これも立派なSDGsだと満足したいのか。どちらにせよ、母が語らずも教えてくれた大切なことのように、今では感じている。

気づいてあげられなかった痛み

カットされたハギレと布切りバサミ

母は家族全員の着なくなった洋服を布切りバサミでジョキジョキとカットし、ウエスやハギレにしていた。「これって手が痛くなるのよ」とこぼしたことがあった。自分がやるようになって、この布切りバサミで洋服やタオルを切っていく作業が意外に大変で、初めて母が言った言葉の意味がわかった。何枚もの生地を切っていると、ハサミを持っている親指と人差し指の間が、赤くなり痛くなってくる。これを解消するべく電動ハサミを導入。音はかなりするが、慣れてくれば手動でカットする何倍もの早さと、手にかかる負担が劇的に改善した。ふと、母に教えてあげたかった…と思わずにはいられなかった。当時は母の作業を「ふーん、そんな風にするんだー」程度にしか見ていなかった。もっと一緒に作業をしていたら、早く気付いて違う未来もあったかもしれない。

マット作りはワンコのため

子犬がタオルケットの上でへそ天で眠っている、その脇きには畳まれたタオルケット

古くなったラグやバスタオル、タオルケットは、半分か3分の1にカットし四方を母のミシンを使って縫い、バスマットやワンコのベッドマットに作り替える。ワンコのベッドマットやカフェシートは、汚れたら洗濯するよりそのまま処分できる、と思うことでストレスが減るのが実は嬉しかったりする。

ペット用のマットは、もちろん市販のものの方がふっくらしていて、おしゃれなものが多いがただお高い…。長持ちさせるために洗濯やお手入れが欠かせない。愛犬のため、清潔に保ってあげたいと思い、リメイクの手作りベッドマットを定期的に交換して、掃除のストレスと洗濯の回数を減らす事にした。それに老犬になれば色々とお世話も増えてくると予想もできた。老犬介護の粗相の心配もリメイクした手作りマットなら、遠慮なく使えるだろうと、衣装ケース3箱分くらい作り貯めた。セミの鳴き声と、ミシンの音を子守唄代わりにへそ天で眠るワンコを、横目にせっせといずれ来るであろう未来のため作り続けた。

今年も、来年も

家庭用の卓上ミシンと麦茶と裁縫道具とタオルケットと扇風機と風でたなびくカーテン

数年間は、足元でワンコが気持ちよさそうに眠るクーラーの効いた部屋で、私の夏の恒例行事は行われていた。今は足元にいたワンコはいない。クーラーは1人だと勿体無いと思って扇風機を全開で回している。(時々ハギレが舞ってしまって、慌てたりするけれど。)いつか必ずくるであろうと思っていた老犬介護の未来はこなかった。今も出番を失ったマットは引き出しに眠っている。
それでも私は毎年、楽しみにしている夏休みにこの恒例行事を欠かさないでいる。母の残した重いミシンを、今度は私が「よっこらっしょ!」と言って引っ張りだし、スイッチを入れる。首にタオルをかけて麦茶を飲みながら、貯めていたお古でウエスとマット作りをしている。いつかまた家族が増えるかもしれないと希望を持って。

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